インドネシアの津波 ー火山活動や海底地滑りも津波を起こすー
12月22日(2018年)インドネシア、スンダ海峡で発生した津波では、24日現在の報道によると死者行方不明者が300名をこえています。この津波はスンダ海峡に浮かぶクラカタウ火山の噴火活動に関連するものと推定されています。気象研究所の石川有三氏提供の資料によると、クラカタウ火山では1883年の噴火でも最大津波高42mに達する津波が発生しています。このときの津波による死者は34,417人となっています。
図1.スンダ海峡とクラカタウ島(クラカタウ火山)
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日本でも ー1741年の北海道と1792年の九州の火山噴火による津波がー
1741年8月28日(寛保元年七月十八日)、北海道の日本海側の渡島大島の噴火に伴い、大津波が発生して二千人を超える死者が出たと伝えられています。この頃の蝦夷地は住民の数が少なかったこともあって記録が少なく、詳しいことは分かっていません。
図2. 渡島大島
1792年5月21日(寛政四年四月一日)、雲仙普賢岳の眉山の東部が火山活動に伴う地震が引き金になって崩壊しました。この崩土が島原海に入り対岸の肥後熊本地方一帯に津波被害をもたらしたのです。このときの津波の波高は最大で9mに達したと推定されています。死者数は一万五千人を超える大災害でした。「島原大変,肥後迷惑」と呼ばれて,その恐ろしさが世に伝えられています。
図3. 雲仙普賢岳の火山活動による眉山の崩壊.
以上、クラカタウ火山は130年ほど前にも、今回以上の「津波」を引き起こしていたこと、日本でも江戸期に何度も火山噴火による大津波を経験していることを述べました。
「こんなことは初めてだ」というのが一般の人の思いです。しかし
、人間の一生を超える時間のスパンで見ると、自然災害は確実に同じようなことを、しかも想像を超える「凄まじい」規模で、繰り返してきていることがわかります。
追記
鳥島近海の津波
2023年10月9日6時過ぎ、伊豆・小笠原諸島で津波が観測され、その後気象庁から本州・四国・九州の太平洋岸地方に津波注意報が発表されました。観測された津波の波高はいずれの地域も1m以下で、幸い人的被害が出ることはありませんでした。小笠原近海ではここ数日、鳥島の地震活動が活発になっていましたが、当該の時刻には通常の地震津波を引き起こすような地震(だいたいM6.5以上)は発生していません。したがって、今回の津波も上述のクラカタウ島や北海道渡島大島あるいは九州島原のように、大きな地震に伴う地殻変動による津波ではなく、鳥島近海の海底地滑りや火山活動が引き起こした津波の可能性があります。今後の発表、報告に注目しています。
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