海底地滑り 火山津波 火山が引き起こす津波
 
日本海東縁プレート境界の地震地学
Seismo-Tectonics on the Eastern Japan Sea Plate Boundary

新潟の地震を考える
My View about Seismicity around Niigata Region

海底地滑りや火山が起こす津波 ―日本でも起きていた火山津波― Tsunamis caused by submarine landslides and volcanoes - volcanic tsunamis that also occurred in Japan -
2018年12月24日、2024年2月3日更新
 
 インドネシアの津波 ー火山活動や海底地滑りも津波を起こすー

 12月22日(2018年)インドネシア、スンダ海峡で発生した津波では、24日現在の報道によると死者行方不明者が300名をこえています。この津波はスンダ海峡に浮かぶクラカタウ火山の噴火活動に関連するものと推定されています。気象研究所の石川有三氏提供の資料によると、クラカタウ火山では1883年の噴火でも最大津波高42mに達する津波が発生しています。このときの津波による死者は34,417人となっています。
タイトル
図1.スンダ海峡とクラカタウ島(クラカタウ火山)  
Sunda Strait and Krakatau Island (Krakatau Volcano)

日本でも ー1741年の北海道と1792年の九州の火山噴火による津波がー

 1741年8月28日(寛保元年七月十八日)、北海道の日本海側の渡島大島の噴火に伴い、大津波が発生して二千人を超える死者が出たと伝えられています。この頃の蝦夷地は住民の数が少なかったこともあって記録が少なく、詳しいことは分かっていません。
タイトル
図2. 渡島大島
Figure 2. Oshima Ooshima

 1792年5月21日(寛政四年四月一日)、雲仙普賢岳の眉山の東部が火山活動に伴う地震が引き金になって崩壊しました。この崩土が島原海に入り対岸の肥後熊本地方一帯に津波被害をもたらしたのです。このときの津波の波高は最大で9mに達したと推定されています。死者数は一万五千人を超える大災害でした。「島原大変,肥後迷惑」と呼ばれて,その恐ろしさが世に伝えられています。

タイトル
図3. 雲仙普賢岳の火山活動による眉山の崩壊.
Figure 3. Collapse of Mt. Mayuyama due to volcanic activity of Mt. Unzen Fugendake.

 以上、クラカタウ火山は130年ほど前にも、今回以上の「津波」を引き起こしていたこと、日本でも江戸期に何度も火山噴火による大津波を経験していることを述べました。

 「こんなことは初めてだ」というのが一般の人の思いです。しかし 、人間の一生を超える時間のスパンで見ると、自然災害は確実に同じようなことを、しかも想像を超える「凄まじい」規模で、繰り返してきていることがわかります。  

追記
鳥島近海の津波
 2023年10月9日6時過ぎ、伊豆・小笠原諸島で津波が観測され、その後気象庁から本州・四国・九州の太平洋岸地方に津波注意報が発表されました。観測された津波の波高はいずれの地域も1m以下で、幸い人的被害が出ることはありませんでした。小笠原近海ではここ数日、鳥島の地震活動が活発になっていましたが、当該の時刻には通常の地震津波を引き起こすような地震(だいたいM6.5以上)は発生していません。したがって、今回の津波も上述のクラカタウ島や北海道渡島大島あるいは九州島原のように、大きな地震に伴う地殻変動による津波ではなく、鳥島近海の海底地滑りや火山活動が引き起こした津波の可能性があります。今後の発表、報告に注目しています。

   



・地震地学のほかに(プロフィール、地学全般その他)に戻る
  [著者]
 河内一男 
新潟薬科大学非常勤講師(地学担当)
KAWAUCHI Kazuo
Niigata University of Pharmacy and Medical and Applied Life Sciences ,Part-time Lecturer (Earth Science)

記事一覧
・トップページ 日本海東縁のプレート境界
Top page. Plate boundary on the eastern edge of the Japan Sea[19.6.19]

・新潟県の最近の地震活動
Recent seismic activity in Niigata Prefecture[19.6.19]

・海底地滑りや火山が起こす津波
Tsunamis caused by submarine landslides and volcanoes[19.1.1掲載]

・活断層とは ―重要なところは隠れている―
What is an active fault? -Important parts are hidden-[16.8.11]

・日本海東縁のプレート境界
Plate boundary on the eastern edge of the Japan Sea [16.6.19]

・新潟地震・昭和大橋の落橋
Niigata Earthquake/Showa Bridge collapse

・越後の大津波伝説
Echigo's great tsunami legend[15.9.11]

・越後・佐渡の津波被害,越後の大津波伝説
Tsunami damage in Echigo and Sado, legend of the great tsunami in Echigo

・失われた陸地 ―康平図にある島々の意味―
Lost Land: The Meaning of the Islands in the Kohei Map[12.8.1]

・信濃川地震帯と地形・地質
Shinano River earthquake zone and topography/geology

・地震鳴動(地鳴り)予知された地震
Earthquake rumbling. Predicted earthquake[15.10.13]

・信州大町地震の断層運動
Fault movement of the Shinshu Omachi earthquake[14.11.23]

・三条地震の一つ前の地震 ―「四万石地震」(西蒲原地震)―
The earthquake before the Sanjo Earthquake - "Shimangoku Earthquake" (Nishikanbara Earthquake) -[12.9.1]

・信濃川地震帯の長期予知 ―最悪のシナリオを…―
Long-term prediction of the Shinano River earthquake zone - worst case scenario...[12.8.26]

・小泉其明・蒼軒と三条地震
Kimei Koizumi, Soken and Sanjo Earthquake

・中越・中越沖地震の震源断層
Source fault of the Chuetsu/Chuetsu-Oki Earthquake

・中越沖地震の断層線
Fault line of Chuetsu-oki Earthquake[16.6.30]

・津南町外丸の大崩れ
Massive collapse of Tsunan Town Tomaru [16.5.10]

・液状化について
About liquefaction

・沖積平野下の埋没樹は越後大津波の遺物か
Is the buried tree under the alluvial plain a relic of the Echigo tsunami?[23.9.16]


********* 以下は番外編 *********

・海風と陸風
Sea wind and land wind[19.1.3掲載]

・海陸風と災害
Land and sea winds and disasters[19.1.3掲載]

・海陸風と原発災害の放射線汚染帯
Land and sea winds and radioactive contamination zone from the nuclear power plant disaster[19.1.3掲載]

・どんなときに里雪になるのか
When does it become Satoyuki?[18.1.25掲載]

・これまでの主な論文・最近の学会発表要旨
Main papers and summaries of recent conference presentations

・著者プロフィール、地震地学以外の話題(トップページ)
Author profile, topics other than earthquake geology (top page)